美味しいかつお出汁のとり方 昆布は60度で1時間?
かつお出汁のプロセス
通常和食において、出汁とは「かつお出汁」を意味します。
私が若い頃お世話になった料理屋さんでは、毎日朝と夕方に
一番出汁をとっていました。(一日複数回)
そして、出汁をとった後の昆布と鰹節をもう一度鍋に戻し
一番だしで使った鰹節の半量を加えて2番出しをとっていました。
使用目的としては
一番だし(初めにとった出汁)は、懐石料理や会席料理のお吸い物に使う。
二番だし(二回目にとった出汁)は、煮物や膳物形式の味噌汁(赤だし)等に使う。
二番だしは、お吸い物へ使用する事はまずありません。
しかし、一番だしが余ると煮物や味噌汁に使用していました。(落としていた)
二番だしは、賄いの味噌汁や煮物などにも使用していた為、若干多めにありました。
その日にとった出汁を次の日に使い廻すのは厳禁でしたので、
予想以上に出汁が必要になった時は、それは大慌てて準備した事を覚えています。
ところで
当時の出汁のとり方は
1: 鍋に水を張り、汚れをふき取った昆布を入れておきます。
(最低一時間前には準備しておく)
2: 鍋に火をかけ、沸騰直前で昆布を鍋から抜き取ます。
その鍋にお玉一杯分の水を落とし、沸騰のグラグラ感を
抑えた後に計量した削り節を一気に入れ静かに湯に差し込んでいく。
3: 鍋の火を消し、アクが出てくるので取り除く。
削り節がす~っと沈む瞬間に、サラシ布をしいた盆ザルの上に流し
そっと濾していく。
4: 琥珀色の透き通った一番出汁がとれる。
といった流れでした。
今の常識では
鍋に水を入れ昆布を入れておくまでは同じなのですが、
60℃のお湯で一時間火にかけ、昆布の旨みを最大限に引き出す!
削り節を投入する温度は75℃~85℃が良い!
美味しい出汁をとれる数字です。
これは2002年
京都の料理人と京都大学の研究員が共に研究を行い、科学的に判明された事です。
お味のほうは?
かねてよりの従来方式と比べ
旨みは確かに数段あがっている!!
何故?
昆布だし最大の旨み成分であるグルタミン酸が、最も抽出する温度帯を
長くすることで旨み成分がより多くでたから。
85℃前後は、削り節の旨み成分であるイノシン酸が抽出しやすい温度帯だから。
ようは、
昆布を入れた鍋を60℃で1時間保ち、
さらに85℃まで温度を上げたら削りを入れる
と、旨み成分がたっぷりの一番出しをとれると言う事になります。
いろいろ調べると
70℃で削り節を入れれば香り成分の揮発は防げる! やら
昆布の旨みは30分以上からは増えていかない! との話もあります。
ネット情報も多々いろいろありますが
私のこれまでの見解では
使う素材や使用用途によって、そこまで厳密にしなくても大丈夫と考えています。
例えば、香りの揮発を第一に70℃の一番出汁を仕立てていこうと思います。
そこで2種の削り節を用意した場合。
血合い多めの雌節 ⇒ きっと生臭い出汁となるでしょう・・
血合いを削り取った本枯れ節 ⇒ 最高の香りを味わえるでしょう!
出来上がりの香りも色合いも大きく違いがでます。
私は予算の関係上、血合いが若干ある鰹削り節を使用しているため
90℃程度のしずかに沸いている状態で、5分程煮出しています。
煮出す理由は
血合いの入った削りなので、削り節にしっかり火を通すことにより生臭みを無くす
事と、ある程度コクのある出汁が必要な為。
血合い抜きの削り節ならば、さっと沈めてすぐに濾します。
その際、サラシ布にある削りを絞ったりはしない。
再度
昆布を入れた鍋を60℃で1時間保ち、
85℃まで温度を上げたら削りを入れる
後に速やかに濾していく。
以上が、現代における美味しい出汁をとる方法です!
まとめ
料理を作る上で、数字や知識を得る事は非常に大切だと思います。
それと同じくらい、扱う素材を考慮しながら作っていくことも大切です。
どの昆布で、どういった削り節で、何に使用するのか?を総合的に考えた上で
良い出汁をお作りください。
出汁のレシピを参考までに記載しておきます。
目安の分量
水(軟水が好ましい)900cc
利尻昆布 20g (利尻昆布は流通量があり、価格的に扱いやすい
上品な出汁がとれる)
削り節 25g~30g(吸い物にするなら血合い抜きが良い
煮物等の場合、血合いは気にしなくてもいい)
二番だし
二番出汁をとる場合、濾した後の削りと昆布、新たに15gの削りに
水を半量(450cc)加え、沸かした後に13分ほど静かに煮出していく。
最後に
長い記事でしたがお読みいただき有難うございます。
ご家庭に和の出汁がある!なんて素敵なことではないでしょうか!
この記事が皆様にとって、何かしらの参考になればうれしく思います。