珍味!海藤花(かいとうげ)
今回は、地蛸の煮方と海藤花のお話です。
地蛸とは、日本沿岸部・若しくは近海の海の生息している真蛸を指します。
旬は一般的には冬場と言われております。
しかし、私の育った地域や触れてきた感覚的には
晩春と秋口の2回!
以前に書いた”蛸”の記事に載せてある
蛸の柔らか煮の写真”には「木の芽」「隠元」が使用されています。
木の芽は路地物を使用。
そのことからも、春から晩春の間の仕事だった事が伺えます。
今回の地蛸はつい先日の入荷物。
なので、時期的は初秋です。
天然物に関して、旬がどうとかは大事な事ですが、
それよりも現物を見ての判断の方が大切だと考えています。
今回は海藤花がある、いわば子持ちの蛸ということです。
タイトルにも付けましたが、海藤花(かいとうげ)を持っているということは
つまりメスであり、卵に栄養を送り届けていたわけです。
するとどうなるか?
①:卵に栄養をとられ身が痩せて行く
もしくは
②:それ以上に栄養を蓄えられている
のどちらかになります。
①であればもう少し前の時期の水揚げがベストとなり、②ならばまずまずOK!
と考えられます。
海藤花とは
海藤花とは、蛸の卵から作られた食品の事です。
名産地としては、やはり兵庫県明石でしょうね。
料理に詳しくないかたでも「明石の蛸」と聞けば、
何となく耳にした事があるほどのネームバリュー!
下の写真にある”黄色い半球状の物”がそれです。
最後の仕上げた写真をご覧になれば
あ~何となくなるほどね~
となると思いますが、海藤花の由来はこの黄色い半球体の中身からきています。
この中身は、ケシ粒状の卵粒がびっしり詰め込まれていて
それを料理にした時に、藤の花が垂れ下がる様に似ている事が由来です。
江戸時代の明石藩の儒者「梁田ぜい巌」(やなだぜいがん)によって命名。
*ぜいの漢字が表記できませんでした。
簡単!蛸の茹で方
蛸の茹で方は作り手によってまちまちです。
私の場合
- 蛸をしっかりと塩もみし、ぬめりをしごき落とす
- 目・口ばし・内臓を取り除く
- しっかりと水洗いし、塩味が残さない
- その間に煮汁を仕立てる(水・酒・濃口醤油・少し味醂)
- 煮汁が沸いたら、蛸を足先から少しずつ入れていく(少しずつ丸くなる)
- 足全体が煮汁に使ったら蛸全体を煮ていく
- 85℃前後で15分
- 途中で上下を返しながら、全体に火をしっかり通す(7分・5分・3分)
- 途中に出てくるアクは綺麗に取り除く
- 茹で上がったらメンキに移し冷まします
- 冷めたら冷蔵庫で保存しておきます。
茹でる時のちょっとしたコツと保存用法
蛸をゆでる際にちょっとしたコツがあります。
1:しっかりとぬめりを除くこと
⇒ ぬめりがあると、生臭い茹で蛸になります。
何かで30分位揉み込んでぬめりを落とすとありましたが
あまり長時間塩で揉み込むと塩気が残ってしまうので、私的にはNGかな!
せいぜい7~8分って所です。
*余談*
某超高級鮨屋では塩もみはNGだそうです。
理由は蛸に塩気が残ってしまうから!
ではどうするのか?
延々と水でしごき続ける(およそ4~5時間)
その程、塩気に対して過敏に繊細に仕事をしているって話です。
私はその様な仕込みを行った事はありません・・・・
2:塩もみの塩気を除くこと
⇒ 蛸自体若干の塩気はあるのですが、過分な塩気は蛸の味が霞んでしまいます。
今回の仕立てのように味付きで煮る場合、特に注意が必要です。
3:番茶で煮るのか?
⇒ 特に番茶で無ければいけない訳ではありません。
写真の様に茶葉をリードペーパーに包み、煮出汁に入れておく方法もあります。
何故お茶の葉なのか?
それは、お茶に含まれるタンニンという成分に関係しています。
タンニンは蛸の小豆色の色素を落ちにくくする作用があります。
その為に「お茶の葉=タンニン」を使用するだけのことです。
小豆色を出すのであれば、小豆でも濃口醤油でもなんでもOK!
茹で色を気にしなければ、無くても良いのです。
4:蛸の口ばし痕に十文字の包丁を入れておく
⇒ 火の通りを良くする為です。
足の付け根部分から、目がある部分(頭)は火が通りにくいのです。
包丁を入れることで火が通りやすくなり、茹で時間短縮に繋がります。
そのことで茹ですぎずにすみ、ジューシーな蛸へ仕上がります。
5:途中で上下を返しながら煮る
⇒ 目の上部分(頭上部)にも、均一に火を通していく為です。
巷には蛸の茹で時間を5~8分辺りに設定している記事を見かけます。
数字先行で茹で上げてしまうと大変危険です。
特に目の付近(頭)は火が通りにくい場所なので、
足や胴体と同じ時間というわけにはいきません!
何度も書いていることですが、
余熱調理は、プロが経験と実績の積み重ねとその場の感触で判断できる事!
その後の用途も、保存も計画を考慮したうえでする仕事なので、
安易に
余熱で火を通せば中はしっとりジューシーさ!!
は、痛みやすい蛸にはしない事をお勧めします。
6:茹で上がった蛸は自然に冷ますのか?
⇒ 私の場合2つのパターンで行なっています。
①:カウンター等でお客様に茹でたてをアピールする際には放冷。
釣り針等に胴体をひっかけ吊り下げます。
②:氷水に漬け込み一気に冷やす
冷えたら直ぐに足を1本1本切り出し、サランラップで包みます
それを冷蔵庫に入れ保存です。
蛸自体は水分を多く含む素材なので、痛みやすいのです。
それは茹でてあっても変わることはありません。
*ジューシーに仕上げなければゴリゴリ硬く美味しくはない
では、ジューシーとはどういう状態なのか?
もう、お分かりいただけると思います。
仕上がりは?
下記は、試食用に切り分けた物です。
写真で見る限りでは、煮過ぎのパサパサ感は見えませんね!
むしろ、しっとり火が通っています。
茹でたての蛸を、塩をつけて食べると本当に美味しいと思います。
一度お試しください。
半茹でレアは一番危ないゆで方ですので、必ず火を通していきましょう!
安心安全が一番!!
海藤花の食べ方(煮物)
- タイトルにあります海藤花は薄皮を指で摘みます
- 摘んだら下側に少し包丁で切れ目を入れておく。
- (イメージとしては、水風船の下に釘か何かで穴を開ける感覚です)
- 切れ目を入れたら、沸騰したお湯に穴の開いた下の部分を浸していく
- すると薄皮が徐々に摘んでいる方へめくれていきます。
- 指先までめくれてきたらお湯の中へ落とし茹でて行きます
- 中心部まで火を通す為、時間がかかります(20分位)
- 火が通ったかの確認は、途中で半分に切り分ければ確実です。
- 茹で上がったら少し水で晒していきます。
- 蛸をゆでた煮汁に砂糖・味醂で甘味を加える(少々甘め)
- 海藤花を煮汁でゆっくりと静かに炊いていきます。
- 沸騰させると粒粒が禿げていきますので、静かにしっかりと!
出来上がり
つるつるの黄色い半球体の中身は、下記のようなつぶつぶの集合体
花も4部咲きってあたりでしょうか!
もう少し真子が成長しますと、粒粒がより大きく鮮明になっていきます。
すると藤の花のような「しだれ様」へとなります。
それにしても、その様を見て海の藤の花と命名した感性は素晴らしいです。
あまり店頭で見かけることは少ないと思いますが、
もしみかけたら話の種にでも、一度挑戦してみてはいかがでしょうか!
ほろほろ口で解ける感触はなかなか乙な物ですよ。
例えるなら
ココナツファインをたっぷりまぶした洋菓子(1口菓子)
和菓子ならば、上質の黄身時雨
かなぁ~
蛸のオスメスの見分け方
左がメス 右がオス
違いは何か?
それは吸盤の均一さ
です。
吸盤が均一なのがメスであり時期にもよりますが
一般的にオスよりも身質が良いと言います!
蛸をご購入の際の参考です。
最後に
この記事が皆様にとっても「蛸調理」への一助になれれば嬉しいです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
*ご参考までに
蛸・烏賊・牡蠣はタウリンが豊富です。
タウリンは、疲れた体にとっていい素材です。
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