和食を簡単に!

ちょっとした「コツ」や「黄金比率」で簡単に作れる和食のご紹介

板前のやり甲斐は?

今回は、個人的な思いを綴らせていただきます。

でも

もしかしたら、皆様の通う飲食店でお役に立つこともあるかな?

と思います。

お時間があって、読んで頂けると嬉しいです。

 

タイトルにも書いてある「板前のやり甲斐」なのですが、

今回の話では

こんな素材も扱える!  とか

凄く美味しい物を作っているぞ! やら

まねできない技術だよ!

等の「やり甲斐」ではありません。

 

例えばこんな事がありました。

小さな花に大きな心

私の職場の調理場は、お客様が部屋へと行く通路沿いにあります。

小さな旅館ですので、かなり密接な環境となっています。

つい先日

私達が朝食の準備している最中の事。

「トントン」

と調理場のドアをノックする音

「ハイ?」

と若い子

ドアを開けてみると

小さな男の子の手がみえました。

その手に握っていたのは、どこかで摘んできちゃった”コスモス”

そして

「おいしいごはんをつくってくれてありがと」

たどたどしくも、しっかりとした気持ちのこもった言葉で

お礼を言い、そして花3輪を手渡してきました。

 

うれしかった!

 

もちろん子供の後ろにはお母さんが立っていました。

そして、このシチュエーションも朝の散歩の際にお母さんが考えた物だと思います。

全てに感謝です!

 

ここ数日間は、物凄く忙しいです!

体力的にも精神的にも結構~張ってきます。

やもすれば、スタッフ間では殺伐とした空気が表れたりします。

 

小さな子供の優しさ!

お客様(お母さん)の気配り!

 

綺麗な風が殺伐とした雰囲気を吹き流してくれました。

私は直ぐに花の切り口に濡れペーパーを巻き

ヤマンの猪口に差込み、葉は違うのですが何となく活けてみました。

そして、お客様が座られる朝食の席に置かせていただきました。

f:id:japanasechef:20180820123725j:plain

f:id:japanasechef:20180820125759j:plain

お客様が当館で働くスタッフを思ってくれる

ちょっとした気配り

ありがとうございます!

 

「おいしいごはんをつくってくれてありがと」

 

このような言葉を頂くのは

板前としての大きなやり甲斐です。

 

お手伝いできるやり甲斐

あるお客様の話です。

旅館に泊まられるお客様の目的は様々です。

  • 癒し
  • 記念日
  • 休息
  • グルメ

いろいろありますよね!

私の経験ですが、仏事ごとでのご利用は少ないように感じます。

どちらかといえば、楽しみな何かを求める方が多いかな。

その楽しみの1つには

旅館側が提供できるサプライズ!

これは、お客様と相談しながら決める事が多いです。

例えばカップルのお客様。

「彼女の誕生日に”0000”したいのだけど?」

とくれば

「では、このような事が出来ますよ!」

など、旅館サイドからは過去に行ない好評だった出来事を提案します。

その中には、板場への注文が入る事があります。

 

f:id:japanasechef:20180820131606j:plain

 

伊勢海老の姿造り

サイズ 650g

市場価格での販売ならば、結構なお値段を頂く品です。

 

彼女の誕生日なので、彼女には内緒で持ってきて欲しい!

 

部屋だし料理

通常の料理を徐々に運んでいきます。

料理を運ぶスタッフも、男性客も

彼女がお腹一杯!になってからでは感動が薄れる。

 

早すぎても、遅すぎても駄目

 

双方がタイミングを計る!

 

ついにその時

男性客が指定の合図を送る。

 

スタッフから

「料理長お願いします!」

声がかかります。

 

大根の灯篭に灯をともし、

末広の松、2つの輪を繋いだ「輪つなぎ胡瓜」蛇の目胡瓜

寄り添う紅白

 

これからも幸せな時間が続きますように!

そんな思いを込めました。

 

ですが、いちいち説明するのは控えます。

 

それは野暮ってもんです!

料理人は裏方で良い。

主役はお客様!

 

別注伊勢海老を運んだスタッフに伺うと

彼女さんは、相当喜んでいたそうです。

 

伊勢海老は価格の割には、食べれる部分が非常に少ない食材です。

別注として姿造りでしたが、頭部の使わねば勿体無い。

なので

f:id:japanasechef:20180820134322j:plain

頭部は薄塩をあて8分焼きにする。

それから、酒と醤油の胴割りの「酒醤油」を3回付け焼きします。

細かなあしらいは省きます。

理由は

最初のお造りの印象が薄れるからです。

最初のお造りには「彼女さんの感動と彼氏さんの思い」がある。

 

物凄く彼女さんが喜んでいて、

食べにくい頭部の身肉も、綺麗に召し上がって頂けたようです。

 

食後にはサプライズpart2のケーキ。

 

彼氏の思いは彼女に届いたと思います。

 

微々たる部分ですが、幸せのお手伝いが出来たかな?

嬉しそうな彼氏や彼女の様子を、部屋だしスタッフから聞きました。

そんなときも「やり甲斐」を感じます。

 

喜んでもらえたらOK!

ありがとう!

言われる嬉しさ!

そして

言える有難さ!

 

板前は感謝に弱い!

熱い思いに弱い!

それでいい。